前回のお話はこちら
お店で外食する時、
他のテーブルをあまりジロジロみるのは
マナー違反だけど
チラ見して
「あ、あれ美味しそう!」
ってやっちゃうわよね。
お母さんは確信的にキョロ見する。
孤独のグルメのゴローなんて
恥ずかしげもなく
他の人の注文した料理を
「あ、自分もそれください」
なんて言っちゃってるからね。
でもこの時のお母さんは
チラ見する気は本当になかったのよ。
でも、
否応無しに視界のすみに映った
隣のテーブルの「それ」は
お母さんの意識を捉えてしまったの。
おとうさんの顔を見たら
彼もまた、「それ」を見てしまったようで
「それ」から視線をゆっくり
お母さんに移して凍りついていた。
そして私たちは無言で
そっと店内を見回し、顔を合わせた。
見た?
み、見た…
信じられないものを目にした我々は
固唾を飲んで自分達の料理を待った。
そして運ばれてきた料理がこちら
ちなみに最近食べた普通の定食
写真じゃ伝わりきらなさそうだから
説明すると
お母さんが注文したトンカツ定食は
ご飯3合、トンカツ5枚、うどん1玉
これ、ご飯とうどん少なめで頼んでるのよ。
お父さんの方はうどんは完全に3玉以上あった。
唐揚げはでかいのが10個以上乗ってて
ご飯はやはり3合ほど。
さっき周りを見渡した時に見て
2人が凍りついた光景はこれだった。
店内全てのテーブルに
日本昔ばなしに出てくる
御供物みたいな山のご飯と
炊き出しかな?って量のおかずが乗ってたの…!
ここはそういう店だったみたい。
山盛り専門店。
運ばれてきた料理の量に
完全に怯んでしまったけど
と、とにかく運ばれてきたからには食べなくちゃ。
いただきます!
トンカツにかぶりつくと
衣は厚過ぎずサクッとしてて
お肉は薄く安っぽいけど
よくした処理がしてあるのか
臭みはなく、ソースをかけたら
キャベツとのマリアージュが中々美味。
これなら結構食べれるかも。
キャベツ、ソース、ご飯、味噌汁
そしてうどん
このリズムでしばし無言で
食事を楽しんだわ。
おとうさんの山盛り唐揚げと
5枚のうちの1枚のトンカツを交換。
唐揚げも、
醤油と生姜やニンニクの薬味の味がよくしみていて、
唐揚げにはマヨ派のお母さん好み。
美味しい美味しい
しかし。
まあ当たり前だけど全然減らないの。
食べても食べてもトンカツ。唐揚げ。
さらにうどんがかなり厄介で
讃岐うどんのような
喉越しツルツルだし濃いめ
っていうタイプじゃなくて
手打ちで歯応えがぎゅもぎゅもした
醤油濃いめの関東うどん。
1本食べたらアゴいわすやつ。
お母さん頑張ったけど顎関節症だし
うどんは5本ほどでギブアップだったわ。
トンカツは1枚が限界…
お父さんは年齢の割にはよく食べるから
普段なら3人前くらいは食べれるけど
この定食には勝てず唐揚げ数個と
ご飯、うどん全てを残していた。
彼とはかれこれ20年の付き合いだけど
食べ物を残してるところを初めて見た。
お腹ははち切れそうなほど膨れ
しかし注文しておいて料理を大量に残してしまい
なんともいたたまれない気持ちで
食後の茶を啜った。
(このお店、ほぼ満席なほど賑わってるけど
みんなこの量食べてんのかな?)
小声でお父さんに問いかけ
再び我々は店内をこっそりと見回した。
隣に座っていたのは
文豪のような雰囲気を纏った
白い髭に白髪頭の出立の初老の男性。
体型は中肉中背、片手には文庫本を持ち
1人で本を読みながら食事をしていた。
彼のテーブルに並べられた料理は
さっきお母さんたちが食べた量より
さらに大盛りで、ご飯は多分5合くらいある。
それをこの文豪が、ワシワシと
でも静かに粛々と平らげていくではないか…!
そして後ろのテーブルには
TikTokで踊ってる動画を投稿してそうな
今風のお嬢さんと
韓国アイドルをだいぶ意識してそうな
オシャンなお兄さんのカップル。
2人のテーブルに並んだ料理は
お供えマウンテン白飯と
タライのような器にいっぱいの
肉野菜炒め、うどん、おしんこ。
それが2人前。
2人は互いにアンニュイな雰囲気で
会話をしながら、食事量に怯む様子なく
やはり粛々とモスモスと食しているじゃない。
他には少し遠くのテーブルを占領してる
6人くらいのガテン系団体。
いやわかる。
ああいう人たちがたくさん食べるのはわかる。
でもでも、でも、ご飯5合よ?!
今お母さんなんてつぐおと2人で
1日1合半よ?!
いくら肉体労働してるからって
そんなに食べれるものかしら?!
しかし彼らは皆、
その量に特にリアクションをするでもなく
いつもの食事風景のように
左手に茶碗、右手に箸を持ち
グワグワとおかずを口に運んでいた。
確信した。
このお店、客が全員大食い族。
大盛りのお店にも驚いたけど
世の中には大食いの人が
こんなにたくさん普通に暮らしてるなんて
驚愕の事実よ。
だって、みんな一見普通で
まさかタライからマウンテンライス食べてるなんて
想像もできないもの。
大食い民族は実際に存在した。
そしてこの世には
大食い民族に食事を提供する店が
ひっそりと暖簾を掲げている。
40年以上生きて
日本のことはおおかたわかった気でいたけど
まだまだお母さんの知らない世界は
たくさんありそうね…
最新YouTube動画はこちら!
つぐおと2人で旅行に行ってきたよ
コメント