山田君が会社を辞めた 前編はこちら



退職を決意した山田君、
そのことを社内で誰にも話題にされぬまま
彼の最後の出勤日はやってきたわ。


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事務所で山田君の席はお母さんの向かい。
山田君がいなくなたら目の前は空席よ。
なんだか寂しくなるじゃない。。。


密じゃなくなっていいとも思ってるけど。
ちょっぴり。



お母さんがちょっぴりしんみりしていると
50代男性社員Aさんが外出するみたいで
「じゃ、行ってきます。」と
オフィスを出ようとしていたわ。


Aさんは出ていく前に
思い出したように振り向いて
山田君に向かって


「じゃ、おつかれ。」


と一言。


山田君は
「あ、はい!お疲れまです。
ありがとうございました!」



って、男性社員の後ろ姿にお辞儀してた。


そんだけ ( ´_ゝ`)


うっそ。
ドライ。
ドライを極めてる。
SuperDry!
極度乾燥(しなさい)ってこと?


驚きよ。いくらなんでも殺伐しすぎなのでは。
アルバイトや派遣じゃないのよ?
社員やで!


しかしさらにお母さんを驚かせたのは
社長の対応。


Aさんに続いて社長も外出だったらしく
ジャケットとカバンを持って
オフィスを出ようとしてたわ。


そして彼もまた、思い出したように振り向いて
山田君に一言。


社長
「じゃあ、お疲れ様。がんばってね。」


山田君
「はい!ほんとに、
今までお世話になりました。
ありがとうございました!」


社長
「じゃっ」


お母さん
(^ν^)
おー社長今日もかっこええのぉ〜


。。。


じゃないわ (゚Д゚)‼︎
見損なったわ!


だけどさぁ
こうなってくるとわからないわね。
みんながドライなんじゃなくて
お母さんがウエット過ぎるのかも。
こんなもんなのかも。
期待し過ぎてるのかも。


良くないわよね。
これでみんなを非難するのは
価値観の押し付けだわ。


お母さんはお母さん、
人は人。
忘れるところだった。フーε-(´∀`; )


山田最後の日は
終始こんな感じでみんなが順番に
super dryに別れを告げていった。


そしてお母さんが帰る時。
極力ウエットな気持ちを抑えて
山田君に声をかけたわ。


「山田さん、お疲れ様でした。
私は短い間でしたけど
大変お世話になりました。
これから頑張って下さいね!
応援してますよ!
これ、ほんの気持ちですがどうぞ。」

と、用意しておいたスタバカードを
そっと差し出したわ。


お母さんてば、
10年以上も引きこもってたわりに
我ながら社交ばっちりだわ。


社交辞令の中にも感情を入り混ぜた感じに
大人の女性な挨拶ができたもの。


パーフェク!


と満足していたその時、
山田君の隣には別の男性社員Bさんがいたんだけど
Bさんは黙ってお母さんと山田君の
やりとりを見てたと思ったら
突如こんなこと言い出したわ。


「ちょっとー、お母さん
社内恋愛禁止ですよー
え、不倫ですかー?
だめですよ。ぐふふふふ」


。。。。(゚Д゚)‼︎オ・・・オッマ


コルァァァ!
なに突然のゲス突っ込みしてんのあんた!
お母さんのパーフェクな見送りが
台無しじゃないの。。。!


予期せぬ展開に狼狽するお母さん
でも、そんな心のうちは知られたくないわ!
なんとか大人の余裕でここを切り抜けたい。


「うふふ。ラブレターですんで
後でこっそり読んでくださいね。」


山田君「(´▽`;)エッ。。。」


男性社員「(´Д`;)エッ。。。」


お母さん「(;ノ∀`)アチャー。。。」



チーーーーン



ここにきて痛恨のダダ滑り
冗談が通じねえのかチミたちには。


前にもこんなことあった。山田のやつ
以前にもお母さんを豪快にスベらせたんだった
いや、今回は山田君悪くないか


山田にスベらされた話



しかし凍った空気を打ち破ったのは
山田君だった。


「お、お母さん。ありがとうございます!
こんな。。。んいただいちゃって、、
いやほんと、うれしいです!
何にもできなかったですけど
一緒に働けて良かったです!
本当にありがとうございます!」


そう言いながら、彼の瞳の端に
キラッと光るものがあったことを
お母さんは見逃さなかったわ。


山田。。。あんた。。。


良い子!・゚・(ノД`;)・゚・


Bさんのゲス突っ込みでどうなるかと思ったけど
山田君てばお母さんに
心のこもった挨拶をしてくれたのよ。


現場は一転して
最後のわずかな時間をお互いに惜しむような
暖かい空気に包まれたわ。


山田君、本当は社員のみんなと
こんなふうにお別れしたかったわよね。


彼が今度働く会社は
こんなに殺伐としていないことを願うばかりだわ。